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素手での一撃

 ユウは思う。


(目の前のこ奴は、王族の生まれでありながら戦いに身を置き、しかしそこに確固たる信念が見えぬ)


 しかしロイドに信念がないわけではない。

 やらねばならぬ戦いならば、躊躇はしない。

 ただ、回避出来る戦いがあるならば回避しようとしたまでだ。

 しかしユウはそうは思わない。


「私に怖じ気づいたか、王族の恥さらしめ」


 尖るユウは、明らかにロイド個人に対して憤っている。

 それが何かはロイドには分からなかったが、しかし、格上のユウが冷静さを失っているならば、そこにつけこむ戦いをするべきだし、少しでも肉薄することを目指すべきだとかんじた。

 ならば、苛立ちを上乗せすべきだとロイドは行動を開始する。


「怖じ気づいてほしかったか? 勇者ともあろうものが」


 挑発の言葉を吐き、隙を作ろうと目論んだが、その瞬間にユウの姿が消えた。


「!」


 考える前に体が動いた。

 ロイドは全速力で後退したが、眼前にユウの姿。


「ちぃっ!」


 小太刀を抜刀して峰に掌を当て、体全体の関節をゆるく曲げ、しかし筋肉には力が入る。

 そこに飛んできたのはユウの拳。

 受け止めた格好のロイドだが、口惜しさから叫ぶ。


「全身使って一撃受けるのがやっとか!」


 対するユウも言葉を発した。


「大したもんだよ、私の一撃だぞ!」


 確かにそうだ。

 相手は超人勇者ユウなのだ。

 だが口惜しいロイドは更に一言。


「素手だがな!」


 ユウの使う武器は剣のはずだ。

 しかしロイドに対して、抜剣はされていない。

 つまりユウはロイドに対して、何らかの怒りを持ちながらも、格下扱いをやめていない、本気にはなっていないということになる。

 それがロイドには口惜しいのだ。

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