あずみの逃げ
あずみは何も分からぬまま。
ごまかされたとも言えるし、あえて騙された様なところがある。
あずみは本能的に不穏さをかんじ取り、この場は穏便に流そうとしたのだ。
そこには何の他意もなく、ただ引き下がっただけだ。
今突っかかり続けても何も変わらないだろう、という無意識的な諦めもあり、そして、自分によくしてくれる里と兄貴分たちが、分かりやすく悪事に手を染めているとは思いたくなかった。
だからとりあえず、一旦考えを止めたのだ。
「兄者たちは、みんなにも挨拶してくるのでござろう?」
「ああ。 行こうぜ、エタース」
「早いうちに行くか」
どうということもない会話。
しかしそこには、この場を解散させたい気持ちのあずみと、この場から離れたい気持ちのシャサたちの思惑が重なった会話だった。
シャサたちが歩いてゆく。
その背中を見つめるあずみは、しばらくすると別方向へ向き、軽く跳躍した。
そして家の屋根へと、音もなく飛び乗った。
「おじいちゃん、拙者は木の実でも採って来るでござるよ」
そして門外へと跳び、跳躍の度、あっという間に屋敷から離れてゆく。
ネネクレアがどうなるのか、知りたいが知りたくない。
知ればあずみはネネクレアを解放して、里やシャサに敵対行動を取る気がした。
だから気になりつつも、深いところまで知ろうとせずに、ある種、逃げたのだ。




