敵になることもあり得る
そもそも、あずみはロイド王子が連れてきた魔物だ。
「俺の弟子だ」
そう王子は言った。
王子の連れだから里でも受け入れたが、水面下では反対意見も渦巻いた。
「あんな魔物を受け入れるべきではない」
無論、忍の修行を受けさせるなど言語道断という意見が大半を占めた。
何をしでかすか分からない魔物に、教えることがあるものか、となるのは自然なことと言える。
しかしあずみは里の評判を覆してみせた。
まず、清掃を好む妖精シルキーだけあって、里に貢献してみせたし、明るく柔らかい性格で、子どもに好かれた。
そして、不審な行動がなかった。
「いい天気でござるなあ」
そう言っては家壁の前に座り、ぼんやりと雲など眺めるのが日常。
忍が好きで、里の人間を誰も彼も尊敬して師とし、その素直な好意と穏やかさが皆をほだしてしまった。
何かを教わるとすぐ夢中になり、辛抱強く繰り返してマスターするが、決して修得センスがよいわけではなかった。
しかし諦めなかった。
だからこそ里の皆が認め、カワベが認め、シャサも兄妹の契りをかわした。
あずみの気性が悪の性質ではないからこその兄妹の契りではあるが、同時に、万が一の時にあずみを殺す大義名分を得る為の側面もある。
正義感が強く、野心がないあずみは量りやすく信頼を得たが、やはり魔物は魔物という見地から見ると、正義感が強く、野心がないあずみは、ひとたび里の価値観と合わない様なことがあれば、敵になることもあり得るとカワベやシャサに思われてもいる。
そしてエタースも同意見ということなのだ。




