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綻びと無感情
戦い終わったクマガイが周囲に目をやる。
だだっ広い空間には、クマガイと穴倉だけ。
ぼんやりと佇みながら、穴倉はクマガイの方を見ている。
その目には普段の淡々とした様子もなく、戦闘時の激しさもない。
代わりに憔悴だけがあった。
「穴倉」
クマガイは名前を口にしたものの、二の句を継がずに口を真一文字に結んだ。
名前を口にしたのも、黙ったのも、どちらも、穴倉の気持ちが分かった様な気がしたからだったが、とはいえ、何か言葉をかける義理もない、とクマガイは考えた。
これまでクマガイは、弱者である自分の気持ちは誰にも分からない、等と考えて、世を拗ねた様な思考でいたが、しかし、いざ自分が強くなってみると、穴倉がちっぽけに見えてしまった。
「……」
「……」
クマガイと穴倉が、無言で見つめ合う。
どちらの目付きも、ともすれば緩んでいると言ってもいい程に、緊迫感がない。
クマガイも、穴倉も、この空間での戦いが終わったことを直感的に理解しているのだ。
程なくして、空間が綻び始め、クマガイが無感情に視線を外した。
まるで穴倉のことなど、眼中にないと言わんばかりに、だ。




