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止まると思うなよ

 あまりにもあっけなく、黒の思い描いた通りになった。

 クマガイの頭上から股まで完全に黒刃が通り、真っ二つとなった。

 そしてクマガイは絶命した。


「ははははは、勝った! 勝ったぞ! これで邪魔はなくなった! この世界を……!」


 歓喜し、勝利の味を謳歌する黒。

 しかしぞくりと、背筋に寒気がはしった。

 汗がドッと噴き出す様な感覚。

 黒の体に汗腺はなく、実際には汗は出ていない。

 だが、汗に体温を奪われた様な、血の気がひいた様な錯覚に陥ったのだ。


「何だ、貴様は……?」


 黒の声が震える。

 目の前のクマガイは、鋭い眼光でもって、黒を睨み付けている。


「死んでいないのか……?」


 死んでいる。

 クマガイは確かに死んでいる。

 真っ二つにされ、HPは0になっている。

 だが、真っ二つになっているのに、血が噴き出していない。

 一滴もこぼれていない。

 黒の呼吸が荒くなる。

 心臓も、肺もないはずの黒の呼吸が荒くなる。


「何なんだ貴様は。 ……何なんだ!」


 真っ二つにされたクマガイは、依然として黒を睨んでいる。

 体の切断面から切断面に、おびただしい数の赤い液体が流れてゆく。

 血が、右の体から左の体に、左の体から右の体に流れてゆく。


「何だそれは。 ……何なんだ!」


 クマガイの体の切断面は、風でコーティングされている。

 そして、切断面と切断面の間を、空気で作った無数の血管がはしっていて、その中を血液が流れているのだ。


「し、死んだはずなのに……!」


 黒の足ががたがたと震え出した。

 クマガイの心臓は、停止しているのに。

 確かに停止しているのに。

 死んでいるのに。

 止まろうとしない。

 風が血流を流し、死んでいるクマガイを、死んだまま生かしている。

 腹の底から(うな)る様な声で、クマガイが言った。


「死んだぐらいで、止まると思うなよ」


 そしてひいたままだった右手を前に押し出すクマガイ。

 すると、巨大な肉球型の(オーラ)が現れた。


「大、大、大、大、肉球(スタンプ)!!!」


 その大きさは、近距離で視認出来る様なものではなく、黒が左右を見ても、上を見ても、端が見えない。


「!!!」


 黒は飛び退きながら回れ右し、クマガイを背にして真っ直ぐ逃げる。

 魂の接続に時間がかかった様に、魂の分離にも時間がかかる。

 魂が接続した状態で黒として死ねば、それで終わりだ。

 だから今、死ぬわけにはいかない。

 だが。


「くたばれーッッッ!!!」


 クマガイが右手を天にかざし、一気に振り下ろすと、肉球(スタンプ)が倒れ出した。

 黒は必死に逃げる。

 だが、遥か前方、どこまでも特大の肉球(スタンプ)が続いていて、倒れ続けているのが見える。


「ダメだ、こんなのは……」


 どこまで走っても逃れられない。

 そう悟り、絶望にうなだれる黒。


「何でこっちが死ぬんだよ……」


 黒は天を仰ぎ、迫り来る特大の肉球(スタンプ)を見ながら押し潰され、魂ごと消し飛んだ。

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