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困惑する黒球

「っ……!」


 黒球憑きのデシネは、クマガイの剛直な敵意に晒されて身震いする。

 それは黒球にとって、()(がゆ)いことであった。


「……何がそんなに気に入らないのかな」


 デシネの口から出た声は、デシネの意思によるものではなく、黒球によるもの。

 邪神である黒球は、後ろ暗い感情を抱く者の心を取り込んで同化し、意識を支配できる。

 そうなれば、誰であろうと恐れるに足らず。

 故に黒球は、クマガイを揺さぶり、後ろ暗い感情を胸のうちに宿らせたい。

 心を捉えれば勝ちだからだ。


「話をしようじゃないか、クマガイ」


 いかにも敵ではないと言いたげな、柔らかいトーンで話しかける黒球。

 声はデシネだが、意識は黒球。

 揺さぶりをかけて、時間を稼ぎたいと思っている。

 デシネからのびる影は、クマガイの背後にまで及び、そして(うごめ)く。

 影の先端が起き上がり、みるみるうちにデシネと同じ姿に変わる。

 黒球は、デシネの体をおとりにして、背後から襲撃しようとしているのだ。

 だが、クマガイは察知して振り返り、(にら)みを効かせた。


「アリスみたいに、誰彼構わず話を聞くと思うなよ。 俺はお前なんか信用しない」


 クマガイの言っていることは、まさに後ろ暗い性質のもの。

 しかし、黒球はクマガイの心を捉えられず、ただ困惑するのみ。

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