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穴倉は穴倉、クマガイはクマガイ
怒りの表情のクマガイの発した言葉には、とてつもない苛立ちを孕んでいて、一気に空気が張り詰めた。
黒球はもちろん、虚ろな穴倉さえもハッとさせる程で、穴倉は目を見張る。
(こんなことがあるのか)
クマガイがアリスを殺したのは分かっている。
しかし頭に来ることがない。
殺したのは、アリスの意思でもあったし、何より、クマガイが断腸の思いでやったのが分かったからだ。
今のクマガイからは、悲しみの慟哭をかんじる。
穴倉は穴倉としての記憶があって、それ故にアリスにこだわりがある。
ならばクマガイにも、クマガイなりのアリスへのこだわりがあるだろうと、穴倉は思った。
だからこそ穴倉は、クマガイに釘付けになる。
穴倉の意識には、もう先程までの落胆や空虚はない。
(そうか、それでいいのか。 そうだよな)
戦闘生物としての本能ではなく、穴倉羊透としての心が、クマガイを眼中に入れる。
その視線を気にも留めず、クマガイはひたすらに黒球憑きのデシネを睨んでいる。




