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相づち
だが、ことを荒立てる気はない。
アリスがそれを望んでいないことが歯止めをかけた部分はあるが、それよりも今、穴倉が気になるのは、クマガイが動いたことだ。
クマガイは、穴倉と同じ様に造られた異形の存在でありながら、性格的変化がとてつもなく大きい。
イルマとクマガイは縁もゆかりもなく、初対面で、絡みもない。
なのに助けた。
かつてのクマガイならば、女性への下心で近づく様なことはあるだろう。
だが、今回そういった雰囲気はかんじず、ただ義憤に駆られた姿に見えた。
何がクマガイを駆り立てたのかは穴倉には分からない。
だが、だからこそ興味をそそられた穴倉は、クマガイを観察したい衝動に支配され、ひたすらに凝視する。
その視線に気付いているクマガイも、ちらちらと穴倉の様子をうかがっている。
イルマを襲撃した瞬間に立ち会った為、穴倉に対する警戒心はあるが、だからといって緊張感がそこまで高まるわけでもなく、不思議な気持ちで落ち着かないクマガイ。
「どうしたもんかねえ……」
お陰で、口をついて出たのは、穴倉を指しての言葉だったのだが、周囲には伝わらず。
「だね」
それどころか、当の穴倉に相づちを打たれる始末。




