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クマガイとデシネ

 クマガイとデシネの間に会話が成立したきっかけは、クマガイの心にイルマが引っ掛かり、穴倉の爪撃から守ったからだった。

 クマガイとイルマの間には何の関係性もない。

 だが、クマガイはそうは思わなかった。

 クマガイはイルマに共感している。


(この人は俺と似てる)


 イルマは、弱者でありながら自分の主張をしようとした。

 それを見たクマガイは、イルマと、造られた記憶の中での自分を重ねた。


(何か、似てる)


 厳密には、造られた記憶の中のクマガイは、身勝手にすぐキレてばかりだった。

 その無軌道さと、葛藤しながらも強者に意見するイルマは、そうそう重なる様な人物ではない。

 しかしクマガイの中では、どこか自分と似ている、重なると思った部分があった。

 そして無意識のうちに割って入ってしまったのだ。

 そこには下心がなく、イルマを助けたい思いと、穴倉への怒りがあったし、その感情の行き着く先には、クマガイ自身の心の救済があった。

 そしてその相手は、穴倉が適任であった。

 クマガイと穴倉は、些細なことで何かと衝突しがちである。

 お陰でクマガイは、穴倉に対しての感情の沸点が低い。

 クマガイは穴倉を仲間だと思い始めているが、ここぞという時にウマが合わない。

 クマガイにとっては思うところがある部分だ。

 だが、クマガイにとってのデシネは、イルマを守るという方向性が合致し、現時点で悪い関係性に発展する要素がない人物。

 それはデシネから見たクマガイも同じ。

 魔物ながら妻を一緒に守ってくれたクマガイには感謝の気持ちしかない。

 お陰で、お互いに何の打算もなく、好意的に接することが出来た。

 クマガイもデシネも、本能的にお互いを“敵ではない”とかんじていて、心の根幹で既に結び付いているものがある。

 そんなクマガイとデシネはどこか晴れやかな表情で、お互いを特に見ることなく、イルマを挟んだ左右に、同時に陣取った。

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