焼けばいけそう
クマガイはうんうん唸りながら、時折アリスを見たり、穴倉を見たり。
そうこうしているうちに、クマガイの腹が鳴った。
何の気なしに呟くクマガイ。
「あー、腹減ったなー」
本当に何の気なしだったが、自分の呟きにハッとしたクマガイ。
「まさか……」
そしてみるみる青ざめて行く。
そんなクマガイの顔を見るアリスと穴倉は、何だ?とでも言いたげな表情。
言葉にはしなかったが、二人の無言に対して、クマガイは返答する。
「ねえ、攻撃とか来ないけどさあ! ずっとここに閉じ込められてたら、腹減って死んじゃわない!?」
それはまさに死活問題であり、的を射ている考えの様に思えた。
しかし、穴倉は動じる様子がない。
「俺の尻尾を食べればいいよ。 焼けばいけるでしょ」
さらに青ざめるクマガイだが、穴倉は落ち着き払った無表情だ。
本気で言っているのが分かってしまう、何の感情もない顔。
その目は乾いていて、クマガイは背筋がゾッとした。
「そっ、そうだね……」
とは言うものの、クマガイは本音では拒否したい。
誰かの肉を食べるなど、考えるだけでもおぞましいからだ。
だが、空腹を満たす他の手段など思い付かない。
(乗るしかなさそう……)
そして、渋々同意することにした。
「うん、焼けばいけそう……」
言いながら、クマガイはアリスを見やる。
どう言われるか、反応が気になったのだ。
するとアリスは、汚いものを見る様な顔でクマガイを見て一言。
「キッショ」
そして、「ガインお前、お菓子作れるんちゃうんか! 魔法で!」と叫んだ。
すぐにガインがやって来て手を出すと、その掌には、生産魔法で作られた細長い糧食があった。
すかさずアリスがひったくる様に取って頬張り出す。
「アホ二人は尻尾食えばええわ。 俺はこのボソボソしたやつ食っとくからよぉ」
クマガイが首を振り、「俺もそれがいい!」と言うと、無表情のまま穴倉も「俺も」と続いた。
すると、出したままのガインの掌に魔法の光が現れる。
そして光が消えると、そこには多量の糧食があった。
アリス、クマガイ、穴倉、ガインの四人は、しばらくの間、無言のまま糧食を頬張り続けた。




