変わるのは難しい
穴倉は戦闘の空気には敏感だ。
思考が活性化し、死をも恐れず、愚直に戦う。
戦闘生物の本能がそうさせる。
だが、それ以外の時はおとなしい。
そして、穏やかなことが多い。
「そうなのかって、お前よぉ~」
呆れた口調のアリスが肩を落とした。
何故ならば、アリスの記憶の中の穴倉は、物静かだが、頼りになる兄貴分だったからだ。
静かに奇行に走り、人の話を聞かなくなることはよくあったが、思考停止しての返事は、アリスの知る穴倉羊透らしくない。
しかし、この世界での穴倉は、かつてのイメージと違う。
戦闘の雰囲気が薄れると、途端にのんびりぼんやりした受け答えになる。
だからアリスは、深い意味はないものの、脱力しながら言った。
「お前変わったわ。 ポンコツになったわ」
「……!」
それを聞いて、口をポカンと開く穴倉。
そして瞼をしばたかせ、首を何度も縦に振る。
「ああ、そう~……!」
その返答に、アリスはまた肩を落としたが、穴倉の目は輝き出す。
「そうか、俺は変わったか、ふふふ」
そして嬉しそうに笑う。
アリスも、眉を段違いにして笑った。
「何で目が輝いとるんか謎だわ」
天使の空間の煌めきが無数に浮遊し、あちらへ、こちらへ流れ行き来る。
そのうち二つが、穴倉の目と重なった。
「きらりん」
抑揚のない棒読みの穴倉。
その目は、輝きのエフェクト加工を施した様に見える。
唐突なノリに、アリスは三度、肩を落とす。
「くそしょうもな。 いや、やっぱ穴倉はこういう奴だったわ」
「そうか、やっぱ俺はこういう奴だったか……」
今度は穴倉が少し肩を落として、しょんぼりした。
戦闘時の冷静さと情熱はなく、平常時の抑揚のなさもない。
珍しく、感情の乗った声。
「難しいな、変わるというのは」




