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夫と妻は
その声は弱々しい。
『ここ……から……出し……は……しな……い……』
天使の魂、その声は力なくなってゆき、まさに虫の息となる。
その様子を踏まえて、アリスが首を傾げながら問うた。
「いやオメェくたばりそうじゃん。 そしたらこの空間だって消えるんじゃねぇの?」
誰もがアリスと同じ思いを抱く。
だが。
『……』
天使の魂は、もう何も答えない。
『……』
空間全てが異様に煌めき続けている。
そして、しばらく誰も、何も言わないが、デシネが沈黙を破った。
「……攻撃が来ませんね」
デシネが周りをゆっくり見渡す。
誰に問いかけるでもなく言った言葉だったが、妻が頷く。
デシネの妻は、デシネに腰を抱かれている。
デシネは、いつ、どこから攻撃が来ても妻を守るつもりで、その手を緊張させていた。
しかし、天使の空間は、ひたすら煌めいているだけだ。
どうやら安全だと判断し、手の力を緩めるデシネ。
その弛緩をかんじた妻の体も脱力する。
互いの顔を見合わせた夫と妻は、束の間、安堵の表情で見つめ合っていた。




