あの女、何者だ
「何かあの女、見たことある気がするんだよな……」
戦闘に加わらず、傍観の姿勢の吸血鬼マシアスがボソボソと呟いた。
ガインと天使憑きの女は今まさに激突中。
明確に殲滅を宣言された今、全員でかかり、全力で倒すべきだとマシアスは思う。
のんきに傍観している場合ではないのは誰もが分かっているから、皆、臨戦態勢を取っている。
マシアスもいつでも戦闘に加わる気ではいる。
しかし、戦闘に参加する前に、何かを思い出さねばならない様な気がして、短剣を構えることはしていない。
「うーん、どこでだったかなあ」
腕組みし、目を瞑って考え込むが、思い出せない。
マシアスはあまり頭がよくない。
しかも、吸血鬼らしく、衝動的に生きてきたので、そもそもが思慮に欠けていた。
だが、マシアスなりに思慮する。
この場での戦闘において、衝動に身を任せるだけでは打開出来ないこともあると学んでいたからこその行動だ。
「敵だったら覚えてるはずなんだよ。 しかもあんな強えなら、忘れるはずがねえ。 でも思い出せねえってことは、俺が会った時は強くねえ……? うーん……」
「どうした、マシアス」
フォンテスがマシアスの目を見て言った。
マシアスもフォンテスの目を見る。
「いや、あの女、見たことありません……?」
「……俺も少し気になっていた。 ……あの女、何者だ」




