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ただの己(おのれ)
だが、ふと思う。
この声に身を委ねてどうする?と。
「……」
黒球の声が聞こえる。
力をくれると言っているのが分かる。
(力がほしい)
ガインは力を欲している。
(誰よりも強い力がほしい)
それは何の為?
(己の周りの者の為)
「……」
守るべきものがあるのならば、迷うことはないはずだ、身を委ねろ、と黒球が言っているのが分かる。
「……」
(そうだな。 その通りだ)
そしてガインは抗わない。
ただひたすらに黒球を理解し、同意して行く。
黒球の声は喜色が強まって行く。
新たなるしもべの誕生を予感して。
───だが。
「だが己は、貴様と共には在らぬ」
「……!?」
ガインの目は、真っ直ぐ女に向かっている。
「あの女の神聖も、貴様の邪悪も、己が打ち破ろう。 神殿の騎士でも、魔物でもあり、そしてそのどちらでもない、ただの己、ガインがな」




