再三
そのことに気付いたクマガイは、回転しながら思う。
(風は俺に速さをくれる。 黒の力は俺の毛を刃の鎧にしてくれる。 だけどベースの俺自身は弱いから、体が耐えられないってことでしょ)
回転しながら、クマガイは地上のアリスに目を向けた。
一瞬だけ見えたアリスはこちらを見上げて何か叫んでいた。
今、アリスが何を思っているかは分からない。
戦うクマガイと穴倉を止めようとしているのかもしれない。
(穴倉は結構平気そうだけどさ! 俺はもうズタボロだよ! たぶん、いや、絶対に勝てない!)
クマガイの考えは正しい。
たとえクマバズソーが穴倉に届いても、穴倉は魔力を糧にして回復してしまうだろう。
だが、クマガイはこの戦いで何かが掴める様な気がしていた。
だから、再三の突撃を敢行している。
(勝てないだろうけどさ! 借り物の力だけどさ! 勝とうとする俺の心はさ!)
「ウォォォォォォ、届けぇぇぇぇぇぇ!!!」
「無駄だよ」
穴倉の触手の中には、液状の炸薬が仕込まれている。
クマバズソーが触手を切り、炸薬に触れた。
その瞬間、爆発が起きる。
そして爆発は、クマガイが回転の為に噴出している風に一旦吹かれて散り、そしてすぐさま、風の中心のクマガイに向かって、巻き込まれる様に収束してゆく。
その光景を見る穴倉は何も思うことがなかった。




