隣我(リンガ)
鳥に寄生した、生命のリンガの種こと高木亜実が、空飛ぶスライムクイーン池中瑠璃と別れて向かったのは、王都。
着いたのはもう日暮れだった。
その一角にある平屋の病院に、意識不明の少年が入院している。
高木は、その少年の病室にほど近い木の枝の上で待つ。
週に一度、昼になると、母親が少年の世話をしに来る。
窓を開けて空気を入れ替えるその時に、高木は飛んでこの病室に入るのだ。
「また来たのね、ピーちゃん。」
力なく手を出す母親の掌に乗り、おとなしく座る。
テーブルの上には、一度意識が戻った少年がせがんだ鳥かごが置かれている。
母親が鳥かごの華奢な格子戸を開けると、高木はその中に入った。
「お前はお利口さんね…。」
母親はしばらく高木を眺めた後、帰って行った。
「行きましたね…。」
鳥の脳に伸ばした触手を引き抜きながら、口から這い出るリンガの種、高木。
すると、鳥が泡を吹いて昏倒した。
小一時間もすれば、鳥は何事もなかった様に起きるのだが、高木に寄生され乗っ取られていた間の記憶はない。
高木は、種から不自然に伸びた根をざわざわと動かして、少年ににじり寄って行く。
そして口から入り、奥へ、奥へと根を伸ばし、無数のごく細い根で脳に絡みつき、少年を支配した。
高木に掌握された少年は、窓のへりによじ登り、外に向かってジャンプする。
「飛空魔法。目標は、ガムドムルァの森ね。」
そして少年、いや、高木亜実は飛び立った。




