やっちまえよ、クマガイよぉ
「まぁよぉ」
立ち上がるアリス。
地面に激突した勢いで全身ケガをしている。
だが、シャノンがあつらえた服はどこも傷みがなく、まっさら綺麗なまま。
お陰で、アリスのケガが大したものに見えない。
「やりやがったな、ド畜生がよぉ。 組成魔法!」
アリスの全身の傷が即座に消えた。
無傷となれば、途端に元気みなぎるのがアリス。
顔の表情があからさまにギラついて、上空のデシネとゾミを睨む。
治ったとはいえ、先ほどゾミに殴り飛ばされ、ケガを負わされたばかりなのが気に食わないアリスは、口を尖らせ、浅い不満を口にする。
「あんにゃろう、ムカつくわ~」
だが、言葉には笑みが混じっている。
邪神相手に一戦終えた自分に、痛烈な一撃を叩き込んだゾミに興味が急にわいたアリスは、鑑定スキルを発動させた。
すると、デシネにもゾミにも、暗黒の気が宿っているのが分かった。
(俺のRevolutionほどじゃねぇけど、身体強化の気ってヤツだな。 ………おっ?)
更に、記述を見ると、その暗黒の気が黒球の残滓によるものだと判明した。
(しぶといなオイ! 完璧に消してぇな、黒い球の力をよぉ。 いつまでも、地味に存在感出しやがってよぉ、ウゼェわ)
アリスにとっての黒球は、得体の知れない、場をわきまえない異質な存在。
最も場をわきまえないアリスは、どんな場でも主役は自分だと思っている。
だから、得体の知れない目立つ存在は意識するし、倒したい。
そして、その暗黒の力を継いでいる者たちのことも意識する。
「目立つ奴、好きじゃねぇわ」
だからこそ、反撃の尖兵を送り込む。
「やっちまえよ、クマガイよぉ」
アリスの声に反応したかの様に、デシネとゾミの傍らにて、爪を剥き出しにするクマガイ。
デシネもゾミも、お互い以外の存在がこんなにも近距離にいたことにギョッとした。
ゾミに殴り飛ばされた時、アリスは、背中からクマガイを切り離していたのだ。
クマガイが呟く。
「そろそろ終わらせてやるよ、俺が」
クマガイの腕が振るわれ、交差した。
切り裂かれたデシネ、そしてゾミ。
二人の肩口から斜めに傷が入り、鮮血が吹き出した。
アリスが叫ぶ。
「オイ! オッサンは味方!」




