七魔王
ガインは深く息を吐く。
胸騒ぎはあった。
だがまさか、人間たちの伝承にある七魔王のうち三魔王が同時に現れるとは。
「美姫の姿をした狂える傲慢。深淵なる怠惰の闇。七色の嫉妬。光輝く飽食の宝石。憤怒の大地王。色欲の魔。貪欲なる邪竜。そのうち三つ、狂える傲慢、七色の嫉妬、憤怒の大地王のおでましか」
ガインはひとりごちた。確か、憤怒の大地王だけは悪ではないはずだ。伝承では、他の六魔王を打ち破らんと、人間の味方となる希望の存在だ。泥の玉だから、あれが大地王で間違いない。何とか味方にせねばならない。だが、ミサが、人間の伝承を知るはずがない。しかし、だ。ミサは泥の玉を手に乗せている。
「ミサ!その手に乗せた大地王を頼む!」
逃げてくれ!
「オイ、全部聞き逃したってェ。もっかいお願い」
アリスの一言にガインの意識はミサからアリスへと戻る。ガインは内心苦笑する。この不遜な言葉はもとより、今隙だらけだった自分に攻撃を加えないというのも、まさに傲慢のなせる業。こいつは傲慢の魔王で間違いない。だが、啖呵は切ったものの、こいつからは強大な力を感じる。ガインは、こいつは己が勝てる相手ではない、と感じた。
「なぁオイ、間に入って仲裁はしてくれないんか?ゴブリン子ちゃんは。俺の仲間なのに」
アリスの言葉に、ガインが絶望の表情になる。まさか、ミサが傲慢の魔王の手下?あり得ない!…とも言い切れない。ミサはLV3のゴブリン・アーチャー。普通ならば、この場で生きているのが不自然な弱者だ。ガインがミサに視線を送ると、ミサが叫んだ。
「ここから立ち去って!さもなくば大地王を握り潰すわ!」
何ということだ。ガインは絶望する。
「ミサ、お前、魔王の手下だったのか」
傲慢の魔王アリスが、ミサの言葉を受けて勝ち誇った笑みを浮かべているのは、きっとそういうことなのだろう。
ガインの発した声は、ミサには聞こえなかった。
「行って、早く!」
ガインは苦渋の表情を浮かべながら走り去った。




