1992/2233
喉を鳴らす穴倉
誰もが上を見て、アリスとゾミ、そしてデシネを視界に捉えようとしているが、かなりの距離があり、人ではない吸血鬼たちをしても、ギリギリ見える程度。
そうなると人間たちには見えておらず、ただ虚空を眺めるのみとなっていた。
だが、きらきらと輝く何かが落ちてきた。
ゾミの背中から斬り離された翼である。
銀色に輝く翼は、まるで木の葉の様に螺旋の軌道を描きながら、凄まじい速度で地に落ちる。
「これは奴の……」
銀の翼は落下速度こそ速かったものの、音もなく接地した。
そしてつーっと滑り、穴倉の前で止まった。
銀の翼の落下地点から少し離れたところに立っていた穴倉。
銀の翼に興味などなかったが、翼が意思を持って穴倉の前に来た様にかんじて、しばしの間、じっと見つめる。
上空ではアリスとゾミが戦闘を再開した様で、アリスの声が聞こえてきた。
穴倉は、声がする上空を見て呟く。
「奴の翼か……」
空から落ちてきた銀の翼は、穴倉の目の前にあって、切断面からは血が流れ出している。
その血を見て、穴倉はごくりと喉を鳴らした。




