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気に食わねぇな
ゾミは地上を見た。
デシネの妻を見た。
デシネの妻の姿は随分若く、デシネとは、明らかに歳の差がある。
若く、美しい女だと、素直に思うゾミ。
(結晶化している間、歳を取らないということか)
そう思うと、胸に、くすぶる様な重みがのしかかってきた。
ゾミは、その感情を正確には捉えきれずにいる。
(何だか、気分がよくないな)
自分の感情が何なのか分からず、苛立つゾミは、デシネの妻に向かって、光の矢を飛ばした。
デシネの妻を排除すれば、胸にのしかかる重みがなくなると思っての攻撃だった。
それ以上でも以下でもない、何でもない攻撃だった。
だがそれは、弱者への攻撃。
「てめぇ!」
声をあげたのはアリス。
その声に、まず吸血鬼たちが呼応した。
デシネの妻の周りに集まり、ゾミの放った光の矢を迎撃する態勢だ。
吸血鬼たちは、デシネの妻を守るつもりでいる。
厳密には、デシネと吸血鬼たちは仲間とは言えないかもしれない。
だが、気性が荒く、剛直な性格の彼らにとって、敵が弱者を攻撃する様子は。
「気に食わねぇな」
そう、気に食わないのだ。




