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芽生え
あの中では、熊谷と自分は、感情が欠落しているところが似ていると思っていた。
熊谷の感情は、常に0か100かだ。
他者への逆恨みや欲望から来る攻撃性以外の感情が感じられず、まともな自我を持ち合わせていない様にしか見えなかった。
穴倉から見た熊谷は、ただの異常者だ。
かつては、あれに似ている気がしていたが、最近、自分は感情の振り幅が小さいだけだとわかった。
だから、熊谷とは全く似ていないと、今は思う。
熊谷は異常だ、と思える自分に、穴倉は安堵せずにはいられなかった。
それは、穴倉にとって、喜ばしいことだった。
「熊谷もこの世界にいるはずだから、いつか会ってみたいな。」
気持ちに変化があると、害でしかない存在の熊谷にも会いたいと思えるのか、と、穴倉は自分の発言に自分で驚いた。
「…いや、やっぱり会いたくはないな。」
穴倉も、熊谷に何故か敵視されていた。
敵意をぶつけて来るだけの存在というのは、会うに値しない。
だから熊谷は嫌われるのだ。
「会う意味がない。絶対にごめんだ。」
熊谷を殺し、喰らい、自らの血肉とした穴倉だが、あれが熊谷だとは、思いもしていない。




