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アリスの拳
「ぐっ、がっ……!」
ゾミの顔が激痛で歪む。
(息が、出来ない)
あばらに突き刺さったアリスの拳。
ゾミは、まるで呼気がそこから漏れているかの様な錯覚に陥った。
しかし、激痛の箇所には目をやらない。
真っ直ぐ前を向いているしかない。
何故なら、今、眼前から目を逸らすと、負けだと思うからだ。
「っ……!」
ゾミの眼前、顔を突き合わせる至近距離に、アリスの顔がある。
ゾミも端正な顔立ちをしているが、アリスの顔はまたとてつもなく整っていて、その顔が意地悪い笑みを浮かべて、そこにあるのだ。
殴り飛ばしてやりたい、腹の立つ笑みだ。
だが、今、殴られているのはゾミの方。
そしてゾミは、肉弾戦が得意なわけではない。
「おらァッ!」
それを見破っているのか、アリスは更に鉄拳を繰り出す。
狙いはゾミの頭部だ。
ゾミは避けようと思うが、少し体勢を変えただけで激痛がはしり、弱々しく呼気を吐いて、動きが鈍ってしまう。
(しまったッ……!)
その瞬間、ゾミのこめかみに、アリスの拳が叩き込まれた。




