芽生え
動ける程度には、傷が癒えた。
穴倉は、目覚めた。
治癒魔法が使えないので、自然治癒を待つしかない穴倉は、土の中で傷が癒えるのを待つしかなかった。
銀色の鎧のゴブリン。
圧倒的な強さを持つ、奴に会うのが怖かった。
だから、地中に潜んだ。
普段も、土の中にいることは多い。
だが、今回は、いつもの様に自ら好んでではない。
それが、穴倉を暗い気持ちにさせたが、同時に喜びも与えていた。
穴倉は、自分自身を誤解していた、と思った。
穴倉は自分を、感情が欠落している異常者だと思っていた。
喜びも悲しみもよくわからなかったからだ。
あの忌々しい記憶の中の自分は、感情豊かな奴らを羨ましいと思っていた。
だが、この世界での自分は、その羨ましいという感情すらわからなかった。
だが、あの銀色の鎧のゴブリンのお陰で、自分は、感情がないのではなく、感情の振り幅が少なかったんだと気付いた。
それをわからせてくれた恐怖。
恐怖によって、感情を認識出来た喜び。
自分の弱さに対する悔しさ。
みじめな気持ち。
全てが自らの内にあることが、穴倉には何にも代え難い歓喜の対象となった。
自分の生に意味を感じなかった日々は終わった。
死にたくないから生きる。
ただこれだけのことですら、穴倉にとってはようやく辿り着いた答えだった。
生きる意味を見い出せず、強くなる作業を繰り返していただけの穴倉に、目標を与えてくれる答えだった。




