救済への不満
「と、あの方は考えているのだろうな」
デシネたちの上空に、人知れず天使が舞い戻っている。
銀の翼をもつゾミだ。
デシネたちを見下ろすゾミの目は、どこか悲しげで、少し憤りの色も混じっている。
「仕方ないと言えば、仕方ない……か。 あの方のお気持ちも理解出来る……」
ゾミの視界に映るのはデシネ。
そして、デシネの妻である。
ゾミにとって、現在の状況は、いわゆる〝気に食わない〟ものであった。
「家族を救いたい。 その気持ちは分かるのだ」
思い出すのは両親の顔。
ゾミの為なら何だってする覚悟が見える、両親の顔。
「大切なお方だということは、分かるのだ」
両親がゾミに対して無償の愛を注いでくれた様に、デシネが妻を愛しているということは分かるのだ。
しかし、だからこそ胸につかえるものがある。
「大切な方を救ってもらえたのは素晴らしいことだ。 今日はあの方にとって、想いが結実した記念日となろう。 ……ならば、私の両親の想いは誰が救ってくれるというのだ? 私の想いは? ……私は両親に生かされている。感謝しているが、苦労をかけるだけの邪魔な存在でしかないともかんじる。 この気持ちが、救われてしまったあの方に分かるのか? いや、分かろうはずがない……! 自分だけ救済されてしまったのだから……!」
ゾミの目に、強い光が宿る。
と同時に、黒い靄がその体を覆った。




