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あの日のままの妻が
デシネが止める間もなかった。
アリスは結晶化しているデシネの妻を、拳で一撃し粉砕した。
その突飛な行動に驚き絶句するデシネ。
脳裏には、ありし日の妻の笑顔が浮かぶ。
「貴様ッッ……」
腹から絞り出した怒りの声は震えていた。
それは強い強い慟哭のようでもあり、弱々しい嗚咽の様でもある。
「貴様ッッ……」
デシネの感情の全てが詰まった様なその声に対し、アリスは無感情で涼しげに目を細める。
そして、デシネの憎しみをまるで気にしない素振りで、鼻歌交じりに手をかざした。
「お前なんか知らんわ、バーカ」
そして顔を前に突き出す独特の会釈をする。
「おっすー」
「何ッ!? それはどういう……ッ!?」
デシネは顔に不快感をあらわにしながら、アリスの会釈の先に目をやる。
そして息を飲んだ。
そこには、女が立っていた。
粉砕された妻の結晶は欠片もなく消え失せ、代わりに女が立っていた。
デシネの妻が、あの日のままの妻が、そこに立っていた。




