黒い気持ち
その思いが心踊らせ、上ずった意識が穴倉を饒舌にさせる。
「ところで、女はハートが強くない、みたいな言い方はちょっとよくないんじゃないの。 炎上すると思う」
「掘り返すなよオイ」
煽る様な穴倉に、強めの語気のアリス。
だが、穴倉もアリスも、表情に硬さがない。
それどころか、二人は、お互いに心が通じ合っているかの様に笑い合う。
この世界にSNSはないし、今、アリスの発言を聞いているのは穴倉とクマガイだけなのだから、炎上云々は起こり様がない。
アリスもそんなことは分かっているし、穴倉もそうだ。
だが、自分たちが人間ではないという話をしたばかりで、他に意識を逸らしたいという気持ち、お互い寄り添おうという意識がどこかしらにあったのかも知れなかった。
アリスにとってのこのやりとりは、仲間たちを思いやってのこと。
穴倉は、クマガイに対する嫉妬の様な感情が混じっていたが、しかし自分の感情を発見出来たことで、にわかに嫉妬心は霧散していた。
クマガイは、そんな二人の笑み合いに余計に孤独感を覚えた。
笑むアリスと穴倉は、生い立ちに苦悩していない様に見える。
「違うんだな、俺とは……」
ほの暗い感情がクマガイの胸中に甦り、目を据わらせてゆく。
だが、黒い感情に再び包まれようとしているクマガイに、流し目のアリスが言い放った。
「お前も一緒だわ」
「え」
「俺たち、同じバケモンだろうが。 違うとは言わせんわ」
その瞬間、クマガイの黒い気持ちが綻んだ。




