ついてくればえぇわ
クマガイは混乱した状態にあって、なぜ素直に座ったのか自分でも分からなかったが、目の前にアリスがいて、自分に何か話そうとしていると思うと、いやがおうにも胸がときめいた。
しかしそれさえもが仕組まれた感情だとしたら、アリスに一喜一憂していることは下らないことなのではないか、と考えてしまったクマガイは、苦悶の表情となった。
(分からない、分からない……)
目を瞑って首を振るクマガイの表情はあからさまに苦悩のそれで、アリスは少しばかり慮る。
とはいえ、アリスはこれから自分の見解を言うつもりで、それがクマガイをより傷つけるかもしれないと思うと、存外言いにくく、よしんば言ったとしても歯切れの悪い言い方になる様な気がした。
それを、自分らしくない気がして少しげんなりしたが、しかし、クマガイに気を遣う新鮮な自分に気付きもして、それ自体は悪くない気分だとも思う。
一回気を遣ったので、ならば一回分、何かやらかしてもいいだろう、とも考えるアリス。
(勢いで言いたいこと言えばえぇわ)
勢いで言うのは、アリスが考える自分らしい振る舞いに該当する。
だがしかし、クマガイにまつわることで、こんなにもああだこうだと考えているのは、何だか癪に障るし、ここは自分らしくない。
そう思ったアリスは、単刀直入に、シンプルに、自分の言いたいことを言った。
「えぇから俺についてくればえぇわ」
何もかもを端折って、ただ結論だけを伝えた言葉。
それを聞いたクマガイは、キョトンとして、しばらく無反応だった。
クマガイを囲む闇が薄くなってゆく。




