よかったわ、大泣きせんで
穴倉は、ゆっくりと噛みしめる様に話す。
いつもはもっと淡々と、無感情で話すのにな、とアリスはぼんやり思い、クマガイを見下ろした。
身長差があるので、見下ろす形になり、クマガイの涙が止まったかどうかは判然としなかった。
ただ、顔の表情は泣き顔ではない。
そのことにアリスは胸を撫で下ろす。
(はぁ……。 よかったわ、大泣きせんで……)
アリスは粗暴で傍若無人。
切り替えも早く、誰が敵になっても素早く割り切って戦えるところがある。
例え戦い、誰を傷つけたとしても、回復させればいい、殺したとしても、蘇生(組成)すればいい、ぐらいにしか考えていない。
戦いで誰かを殺傷することに苦悩することはまずない。
だが、相手の心を傷つけることには臆病なところがある。
繰り返すが、アリスは粗暴で傍若無人。
故に、相手の心に鈍感で、無神経に傷つけることは多々あるだろう。
そしてそれに気付かない鈍感さ、無神経さで、愚鈍に繰り返す。
しかし、相手にリアクションがあると、敏感に察知するところも持っている。
相手の怒りには怒りをぶつけて、相手の心を呑む様に戦うし、その時、相手にぶつける怒りは理不尽でさえあったりする。
しかし、涙を見せられると、寄り添う方向になってしまう。
情に脆いところがあるのだ。
そして、切り替えが早いということは、わだかまりも消しやすい。
だから、クマガイが牙を剥こうとも、涙を見てしまったことで、怒りや敵対心はほどけて消え失せ、心配してしまっているのだ。




