心に波風を立てる
クマガイの肩が震える。
足は震えていなかったが、肩は確かに震えていて、クマガイもそれを認識できる。
しかし、肩の震えに意識は向かない。
クマガイは、自分とアリスたちの関係性について思うことがあり、震えどころではなかった。
「俺はさ……、俺は……」
クマガイの目から、涙がぽたり、ぽたりと落ちる。
「俺はさ、前世を後悔しててさ……」
声にも水気が混じり、涙声となったところで、アリスはクマガイの号泣に気付き、大きく口を開けた。
「……ッア!」
しかし声にならず、オロオロしながら、ただクマガイの言葉を聞き続ける。
涙声で喋るクマガイは隙だらけ。
すると穴倉が、チャンスとばかり、爪を構え、突撃せんと前傾姿勢となる。
するとアリスが首を振りながら、腕でバツを作った。
『やめろやアホ! 話聞け!』
念話で語りかけ、穴倉の突撃を阻むアリス。
穴倉はキョトンとし、「え」と声を出したものの、アリスの意向に従って、攻撃せずに構えを解いた。
そして、少し憮然としながら、俯いているクマガイを見つめる。
(何で涙ぐらいで)
そして次にアリスを見る。
アリスは、クマガイを心配そうに見ている。
(クマガイの肩を持つ?)
穴倉にとってクマガイは、前世の記憶でも、今世でも、元々大した絡みはなかった。
故に、クマガイ自体に大した思い入れはなく、むしろ穴倉にとっては、心に波風を立てる相手として、新たな思い入れを抱く対象になりつつある。




