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塗り替えられる意識
しかし、クマガイにはそれが分からない。
今のクマガイには、それが全く分からない。
「何がおかしいんだよ」
声が震え、怒りの顔となるクマガイ。
すると、全身の体毛、そして背中の棘が確かに波打った。
体毛、棘の一本一本に、攻撃性が宿ったかの様な一瞬に、穴倉は目を見張る。
「おかしくはない、よ」
そしてアリスも、天真爛漫に笑む顔をやめ、眼を引き絞り細めて、ドスの効いた声を出す。
「何噛みついてんだテメェこら、クマガイ」
クマガイは、アリスの言葉に対して、怯んだ顔にはならず。
怒りの顔のままアリスを睨むが、しかし、脂汗が滲む。
クマガイの意識を侵食する黒球の欠片は、この肉体の反応に戸惑い、気持ち的に後退するところがあった。
その瞬間、アリスの言葉に怯んだクマガイの意識が全身に広がった。
そしてクマガイの意識から、黒球の欠片が部分的に剥がれ、混濁していた意識がやや戻る。
「俺……は……?」
クマガイの意識が濃くなり、黒球の支配力が薄れて、精神内の勢力図が塗り替えられ始めた。




