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よろこびと安寧に満ちた瞬間
そんな穴倉を見て笑うアリス。
人間でないことを知る穴倉があえて言った「人間っぽい」という言葉。
それがいかに意義ある言葉か、との意を抱くアリスであるが、言語化出来ずに苦笑いする。
「何笑てんねん」
そして口にした言葉は、ややぶっきらぼうな一言。
ただ、アリスも笑いながら言っていることを、穴倉は見逃していない。
故に不快感はなく、穴倉はまた笑った。
「お前こそ」
むしろ自分の笑顔がアリスに伝播し、アリスの苦笑気味の笑顔が自分に伝播し返した様な、繋がりあっている様な気持ちになって、穴倉はアリスへと言葉を繋げる。
どうということはないやり取りではあるが、しかし心に安息をもたらす。
穴倉は、人間ではないという自覚があり、しかし自分たちの内面が人間と変わらないのではないか、と思い始めている。
そんな時にアリスと笑い合えることは、自分が何者であろうとも構わないのではないかとさえ思える、よろこびと安寧に満ちた瞬間であった。




