1931/2233
頭痛と不快感
「っ……!」
省みるというのは、本来ならばクマガイがもっとも苦手とすることであった。
そもそもクマガイは物事を省みる性格ではない。
ただそこにある事象に反応して、脊髄反射で行動する様な性格がクマガイである。
短絡的で刹那的と言い切ってよい。
これ以上でもこれ以下でもないと言える程に、瞬間のみを生きていたはずだった。
「うっ、頭が……!」
頭痛に顔をしかめるクマガイは、素早く首を振る。
それは、水を浴びた動物が水滴を飛ばす様な動き。
水滴はないが、何かを振り落とすかの様なクマガイの動き。
これを見た穴倉は、意識薄弱、混濁に陥っているクマガイを何となく把握しながら、しかし、それをどうにかしようとは考えていない。
ただ戦い、クマガイを排除出来ればいいと考えている穴倉は、まさに戦闘生物であり、何の思い入れもクマガイに抱いていない。
しかしクマガイにとって穴倉は、ある意味では思い入れがある相手と言えた。
クマガイは、黒球の欠片の影響で記憶が錯綜している。
植え付けられた偽物の記憶をそれと認識出来なくなっていて、前世の記憶だと思い込み始めている。
前世の穴倉は、クマガイにとって、いけ好かない奴だと言えた。
頭痛と共に不快感がクマガイの中に充満して行く。




