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よくもッ!
穴倉の言葉は、今のクマガイには酷な言葉である。
クマガイにとって穴倉は、嫉妬の対象だ。
引き金になっているのは、自分との差。
それを意識する今のクマガイにとって、穴倉への羨望の気持ちは、暗い感情。
「あぁ、お前はいいよなぁ、穴倉」
おどける様に言ってのけるクマガイ。
半笑いの顔で、まるでバカにしたかの様な態度である。
しかし、穴倉には、その気持ちが分かる様な気がした。
だからこそ穴倉は、何の含みもなく言い放つ。
「俺もそう思うよ」
当然と言わんばかりの穴倉の態度。
それがクマガイをさらに激昂させる。
「よくもッ!」
この世界で踏んだり蹴ったりの目に遭っていたことしか思い出せない今のクマガイにとって、何も意識していなさそうな発言をする穴倉は、恵まれている者でしかない。
クマガイは自分だけが不運に見舞われていると思い、恵まれている様に見える者に憎しみを抱いてきた。
つまり、この「よくもッ!」という言葉は、逆恨みの感情が吐かせた、虚しく悲しいクマガイが集約された一言。
当然、穴倉は、何が「よくもッ!」なのか、理解出来ない。




