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分かり合う必要はない
穴倉は戦闘生物である。
アリスたちと同様に、何者かによってこの世界に生み出された個体であり、穴倉羊透としての記憶を植え付けられているお陰で、穴倉羊透としての性格、情緒を持っている。
そして穴倉の性格は、情緒は、戦闘を苦にせず、むしろ戦闘に意欲的ですらある。
だが、戦闘生物としての適合性はありつつも、何ら戦闘技術を持たないのだ。
(アリスは)
穴倉の脳裏に、有栖川の姿が映る。
クマガイを殴り倒し、ねじ伏せた姿が。
(あいつは何だって出来る)
そして、その後の有栖川の振る舞いと、周りの反応が映る。
何だかんだと、その場をおさめてしまう姿が。
(でも俺は違う)
穴倉に出来るのは、かんじること。
考えること。
そして、それを踏まえて。
「戦うしかないんだよ、俺は」
(クマガイ、お前もそうだろう?)
念話ではないので、クマガイには穴倉の言葉は届かない。
だが穴倉は、それでいいと思っている。
ことさら分かり合う必要はないと思っている。




