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そりゃこっちのセリフだよ
「……!」
クマガイにとって、そして黒球の欠片にとって、穴倉の発言は意味不明なものであった。
(ほしいって何だよ? 穴倉は相変わらず謎だな……。 いや? 相変わらずって何だよ? そんな過去は本当はない……? だよな……?)
クマガイは記憶が錯綜していて、穴倉の発言を相変わらずだと思い込んだり、違うと思い出したり、どうだったか分からなくなったり。
これは、黒球の欠片が混じったからこその弊害で、記憶と情報の伝達が完璧でないから起こることなのだ。
「……!」
黒球の欠片混じりのクマガイは、主な意識がクマガイなのか、それともクマガイの意識をトレースした黒球の欠片なのか、本人にも分からなくなりつつある。
だからこそ、穴倉の出方を窺い、慎重に見定めようとしているのだが、記憶障害が如実に現れ、錯乱の色を深めて行くのだ。
穴倉は、そんなクマガイの異変を完全には把握していないが、しかし異常はかんじている。
「何か、味方になったり、敵になったり、お前は何がしたいんだよ?」
穴倉の言葉、その語尾には、少しだが、感情が煮え立つ雰囲気がある。
クマガイの変化を目の当たりにしての素直な感想であるが、これに対してはクマガイの意識が強く目覚め、すかさず返答した。
「そりゃこっちのセリフだよ」




