クマガイの存在証明
───誰も自分を見ていない。
そう思うクマガイは、暗く沈む気持ちを胸に駆け、爪を振るった。
その一撃はシャノンの首を狙い、今まさに炸裂するというところ。
だがシャノンは、クマガイの動きを認識出来ておらず、無反応。
その時、クマガイの脳裏には、先代の魔王の一人であるアプリコットがよぎった。
クマガイの腕によみがえる、アプリコット絶命の生々しい感触。
「チッ……!」
舌打ちするクマガイ。
その時、クマガイの爪は大剣に阻まれていた。
剣を振るうは、銀の鎧に身を包む聖騎士。
ゲブ・ズ・ガインである。
「行くぞ」
ガインは、左手のみで大剣を軽々と振るい、クマガイの爪撃を阻んだ。
そして拳を握り、続けて、拳撃を繰り出した。
クマガイは、その拳撃をかいくぐって避け、ガインの懐に入る。
爪撃を放つには絶好のタイミングだと思ったクマガイだが、しかし肉体は勝手に退いた。
すると、クマガイがいた空間に、アリスの拳と、穴倉の触手があった。
───誰も自分を見ていない。
そう思ったクマガイだったが、しかし、アリスの燃える目と、穴倉の空虚な目が、クマガイをしっかりと捉えている。
アリスの殺意と穴倉の敵意が、今、クマガイに向けられている。
そのこと自体は不服ではあるが、しかしこの時クマガイは、少し気持ちが上向いた。
それは、アリス、そして穴倉の眼中に、自分の存在があることが嬉しかったのかもしれない。




