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凡庸なもの
シャノンの視線に視線を返すフォンテスは、再度質問を投げかける。
相手はやはりシャノンである。
「もう一度聞く。 シャノン、あの小汚いクマの言葉をどう思う?」
フォンテスはわざわざクマガイを小汚いと評した。
それは、フォンテスの、クマガイへの不快感が理由である。
クマガイは黒球と混じった。
姿かたちはクマガイのままでありながら、邪神へと変質してゆく。
フォンテスは、そこに無意識的にクマガイの闇をかんじ、不快感を抱いているのだ。
シャノンは、その雰囲気を察知しながら、思索をめぐらせる。
だが、吸血鬼一族の中で一際明晰な頭脳を持つ女傑シャノンをしても、現時点では不十分な考察にしかならない。
故にシャノンは、情報を整理するだけにとどめようと思い、慎重に答える。
「あの小汚いクマは、この世界のこと、自分たちのことを知ってしまった、と言いました。 あの口調から察するに、それがよくないことだということは分かりますが……」
その答えは、何の面白味もなく、凡庸なものとなった。




