激昂
穴倉が抱く助力の気持ちは、純粋なものだ。
自分が何者で、何の為に造られたのかを生まれながらに知ってしまっている穴倉にとって、背負わされた使命こそが生きる意味になるのは、当然だったのかもしれない。
「俺は俺として生きるしかない」
そう言った穴倉の言葉は、確かにクマガイの耳に入った。
穴倉はクマガイに聞かせる為に言ったし、それを聞いたクマガイは、自分の生を思いながら返答する。
「そうかよ」
その言葉には、大した意味はない。
単なる相づちにも似た、いや、それ以上に意味の薄い、何でもない返答の言葉。
クマガイは、自分で発した言葉ながら、この「そうかよ」が、ともすれば、穴倉の言葉に向き合ってすらいない、いい加減なものの様に思えたのだった。
今のクマガイは、黒球の欠片が心に溶け込み、アリスや穴倉と対峙することに葛藤しない。
その思考は、邪神化していたデシネよりも好戦的であり、そして、クマガイとは思えぬ程に真剣味ある思慮に溢れていた。
クマガイが言う。
「じゃあ、俺とは生き方が違うな。 俺は何にでもなれると思ってるから」
そう言うとクマガイは、血走った目をアリスへ向けた。
アリスもクマガイへと、真っ赤な瞳を向け、不敵に笑った。
その笑みが、クマガイの心を一瞬緊張させる。
緊張を振り払う様に、棘のある、尖った言葉を紡いだクマガイ。
「俺には無理だと思ってんの!?」
その激昂は、あまりいいタイミングではない。
アリスはクマガイの声に対し、目を血走らせ、棘を伴う呟きを敢行する。
「無理だわ」
そして、真正面から完全否定してのけた。
拳を握るアリスからは、闘気が立ちのぼる。




