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電気ナマズだわ
その瞬間、穴倉は、悲嘆に暮れる顔になったが、しかし、意識はそっぽを向いたアリスにではなく、クマガイへと向いている。
視線もクマガイへと向いている。
そして口を開けば、口調は穴倉特有の、抑揚のないもの。
「これは困ったね」
すんなりと発せられた言葉からは、困った様子はかんじ取れない。
穴倉の目は、左右別々に動き、片目はクマガイを、もう片方は吸血鬼たちを見ている。
そして口をついて出るのは、尚もアリスへの反応。
「俺はナマズには似てないと思う」
対するアリスが、簡潔な返答を間髪入れず放つ。
「ナマズじゃん」
その瞬間、クマガイが駆け出した。
アリスに向かって一直線。
みるみるうちに距離を詰める。
クマガイは爪撃を繰り出すつもりだが、それはかなわない。
「……っ!?」
アリスとクマガイの間に電光がはしり、クマガイは咄嗟に体をよじって飛び退いた。
電光を放ったのは、穴倉である。
掌が時折、発光している。
黒球の欠片を取り込み、得た能力なのだろう。
それを見てアリスが言う。
「ナマズじゃん。 それお前、電気ナマズだわ」
穴倉は神妙な面持ちになり、数瞬静止した後、小さく頷いた。
「俺もそう思う」
そして、認める発言をした時にはもう、穴倉の顔は無表情。




