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クマガイの心の隙
クマガイは黒球から聞いてしまったのだ。
アリスたちや自分が、造られた存在であることを。
この世界自体が、アリスたちの為に造られたものであることを。
造物主が別の世界にいることを。
黒球が異界から来たことを。
黒球の目的が、造物主殺しであることを。
黒球の話を聞いたのがアリスならば、穴倉ならば、果たしてどう考えるだろうかとクマガイは思う。
だが、答えは出ない。
これがまたクマガイを不安にさせる。
(俺だけが……)
不安感と緊張で、クマガイの呼吸が浅くなり、視界が揺れた。
生身の肉体ならば、これはままあること。
だが、今、クマガイはアリスの精神世界内にいる。
精神世界のクマガイは、無論、精神体であり、身体的な不調が及ぶはずはない。
だが不調は確かにクマガイに現れた。
これはクマガイの心が作り出した錯覚に近い。
だが、クマガイの心にとっては、自身で作り出した錯覚は真実となる。
(俺だけが仲間はずれ……ッ)
クマガイの心は、今、不安定だ。
黒球から聞いた話が、現在のクマガイの心に深く食い込んでいるし、アリス、穴倉の心が分からないことが、孤独感となる。
そして孤独感が、クマガイの心の隙となる。




