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震える声
クマガイは、キョロキョロと視線を動かし、落ち着かない。
これは、黒球との邂逅を後ろめたく思っているが故の態度である。
口の中が渇き、息が浅く、荒くなる。
そして、渇く口の中とは逆に、身体中からは汗が吹き出す。
口に水分がないのは、汗で全部出てしまっているからだ、などとぼんやり考えるクマガイ。
しばらく沈黙が続き、こんなことを考えても何にもならない、とハッとした時には、アリスが至近距離にいた。
クマガイは、勝ち誇った顔で見下ろしてくるアリスに秘かに苛立つが、とはいえ、何も言えない。
そうこうしているうちに、アリスが話し出す。
「何をそんなにビビってんだよ、えぇ?」
心の色を察するアリスは、クマガイがどんな心持ちなのか、察知出来る。
即ち、動揺を察知出来るのだ。
対してクマガイは、平静を装い、しらばっくれる。
「な、何が? 何がだよ?」
震える声。
クマガイの違和感あるリアクションにアリスが苦笑する。
その表情は意地悪さがなく、どちらかといえば柔和ですらある。
するとつられて、クマガイ自身も苦笑してしまう。




