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何者であろうとも
クマガイが今意識しているアリスは、穴倉は、今のアリス、穴倉でしかない。
クマガイが知る有栖川や穴倉ではない。
記憶の中の有栖川や穴倉は、いわば〝設定〟に過ぎない。
このことにアリス、穴倉は以前から気付いていて、それをある程度あるがまま受け入れている。
だが、アリスと穴倉ではスタンスは違う。
アリスは、この世界に生まれた時から、仲間たちとの関係性があった。
それは、過去の記憶がベースとなっている。
だが、その関係性が例え幻であったとしても、あまりショックはない。
何故ならば、アリスは、この世界において、少なからず仲間たちと激突してきた。
その闘争には、お互いの感情があった。
相手への思慮があれば回避出来た戦いだったかもしれない。
だがアリスは、仲間たちと対峙した時、その場の感情に支配されて行動していた。
それは、仲間たちを束ねていた、記憶の中の有栖川像とは違う、今のアリスでしかなかった。
だからこそアリスは、過去の記憶に囚われず、無軌道な自我を剥き出しにしている自分自身に救われている。
自分自身が何者であろうとも、いや、例え何者でなくてもいいと考えている。




