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やめろや、馬鹿どもが
鬼気迫るクマガイ。
その並々ならぬ雰囲気をかんじ取れぬ穴倉ではなかった。
ともすれば戦いすら始まるのではないか、と穴倉が思うほどに、クマガイは不穏な空気を発している。
とはいえ穴倉は、クマガイが一体何の話をしているか、イマイチ分かっていない。
お陰で、まるで何の気なしに口を開いた様な、そっけない口調となる。
「何の話?」
クマガイの顔がピクリと引きつり、その瞬間、穴倉は素早く立って身構えた。
クマガイと穴倉は、アリスを加えた図式でならば、束の間、共闘することも出来る。
だが、これが二人となると、関係性はかなり薄まる。
二人を繋ぐ鎹がなければ、お互いの感情の沸点を見極め切れない。
故に、一触即発となる。
「……分からないのかよ」
「……分からないな」
共に鋭利な爪を構える穴倉とクマガイ。
穴倉は目を見開き、長い首をもたげる。
クマガイは険しい顔で、前傾姿勢を取った。
両者、今まさに踏み込む瞬間である。
と、その時、アリスが声を張り上げた。
「やめろや、馬鹿どもが!!」
その一声によって、戦いの空気は霧散する。
穴倉は半眼の眠そうな顔でアリスを見る。
クマガイは緩んだ顔で目を閉じて、大きく溜め息をついた。




