この感情すら仕組まれたものだったなら
そんな穴倉の思いを知らないクマガイは、何となく顔を上げた。
クマガイの外観は、子どもが抱きつくサイズのクマのぬいぐるみといったかんじ。
対する穴倉は、巨大な化け物。
故に、共に座り込んだ時、その目線の高さは全く合わない。
穴倉は、竜と一体化して、今の穴倉となった。
今やもぐらの外観ではない。
クマガイには、今の穴倉は、巨大なウーパールーパーの様にも、蛇の様にも見える。
それは、異形そのもの。
クマのぬいぐるみであるクマガイにとっては、自分とあまりにも違う存在に見えた。
だからきっと、同じものを見ても、違う角度からの見方になると思った。
単なる身体的な大小ではなく、感性も違うのだろうなと思った。
「穴倉はさ、どこまで知ってるんだよ」
だからこそ、聞いてみたくなった。
クマガイにとっての穴倉は、記憶の中にある穴倉は、有栖川たちと共にあって、寡黙だが有栖川にも一目置かれている存在だった。
有栖川、いや、アリスへの思いが強いクマガイにとって、それは羨ましいことだった。
自分もそうありたかったとクマガイは思う。
とはいえクマガイは、その記憶が偽物だと知っている。
穴倉に、前世などないと知っている。
穴倉が、目の前にいる化け物でしかないと知っている。
となると、穴倉を羨ましく思う自分の感情すら偽物なのかもしれない、と、クマガイはふと思う。
(俺は穴倉を羨ましいと思ってる。 アリスと仲が良い穴倉を。 でも、この感情すら仕組まれたものだったなら、俺は……)
だからこそクマガイは、穴倉に質問をぶつけてみたくなったのだ。
穴倉が、何をどこまで知っているのかを。
穴倉が、何をどこまで考えているのかを。




