1873/2233
戦う意思を見せず
だが穴倉は、クマガイの感情に触れて、口を開く。
「ふーん、イライラしてるね」
クマガイが穴倉の感情に触れられるのと同じ様に、穴倉もまた、クマガイの感情に触れられるのは当然のことだ。
しかしクマガイは驚きの表情で身構えた。
「……っ!」
クマガイにとって、穴倉は遠い人物という認識がある。
距離感は多少は変わったが、しかし、穴倉がクマガイの感情に言及することは、クマガイにとってはイレギュラーなことなのだ。
身構えたクマガイに、穴倉が言い放つ。
「別に何もしないよ。 やめなよ」
穴倉は戦闘生物である。
クマガイはそれを黒球から得た情報で知っている。
だが穴倉は、戦う意思を見せず、クマガイをなだめてみせた。
クマガイとしても、アリスの精神内で暴れるつもりはない。
ましてや穴倉を相手にするなど、今は、あり得ないことだと思っている。




