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戦う意思を見せず

 だが穴倉は、クマガイの感情に触れて、口を開く。


「ふーん、イライラしてるね」


 クマガイが穴倉の感情に触れられるのと同じ様に、穴倉もまた、クマガイの感情に触れられるのは当然のことだ。

 しかしクマガイは驚きの表情で身構えた。


「……っ!」


 クマガイにとって、穴倉は遠い人物という認識がある。

 距離感は多少は変わったが、しかし、穴倉がクマガイの感情に言及することは、クマガイにとってはイレギュラーなことなのだ。

 身構えたクマガイに、穴倉が言い放つ。


「別に何もしないよ。 やめなよ」


 穴倉は戦闘生物である。

 クマガイはそれを黒球から得た情報で知っている。

 だが穴倉は、戦う意思を見せず、クマガイをなだめてみせた。

 クマガイとしても、アリスの精神内で暴れるつもりはない。

 ましてや穴倉を相手にするなど、今は、あり得ないことだと思っている。

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