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クマガイと穴倉
穴倉はゆるんだ顔でクマガイを見る。
その様子は、まさに、アリスの精神内で出来ることなどない、と割り切っている穴倉ならではの自然体だ。
しかし、その様子こそが、クマガイの気持ちを逆なでするのだ。
「……立てよ」
クマガイは、憮然とした表情で、穴倉に起立を促した。
あからさまな苛立ちの感情を見せるクマガイに、穴倉は些かも緊張することなく答える。
「ん? 立てばいいの?」
「うん」
対してクマガイは、ピリピリした空気を醸し出しつつ、それでいて感情を抑えて、相づちを打った。
穴倉の感情には、依然、何の葛藤も見えない。
(ったく、人の気も知らないで、呑気な)
穴倉の緊張感のなさに溜め息をつくクマガイは、改めて苛立つ。
その時、穴倉は素直に立つが、しかし、無頓着そうな無表情。
そして興味を持たぬまま、クマガイを見つめた。




