持たざる者、アリス
アリスには、自分が選ばれし者だという自負があった。
この世界に祝福される存在だという自覚があった。
それは、この世界に生まれた頃からである。
これは、環境がアリスに思わせた。
アリス一人ならば、この様な自負は、自覚は、芽生えなかっただろう。
単に、自分の強さを誇るだけだった可能性は高い。
しかし、アリスには仲間たちがいる。
仲間たちがいることで、気付きがあったのだ。
〝俺は、この世界にとって、特別な存在だわ〟
アリスは、元来傲慢である。
故に、本気で思っている。
自分は特別な存在だ、と。
しかしこれは、アリス一人の傲慢から到達した思いではない。
仲間たちは、異形の魔物である。
仲間たちは、アリスとあまりにもかけ離れた存在として、この世界に存在した。
アリスだけが人間と変わらぬ姿をしていて美しく、そして、群を抜いて強かった。
他の者たちは異形の魔物で、異形としての一芸がある。
しかしアリスには、それがない。
アリスは、仲間たちにはない、多彩な能力を持っている。
だがそれは全て、用意されていたものだ。
アリスはそう思っている。
だから、仲間たちが羨ましかった。
〝俺だってそんなんやりたいわ〟
アリスのこの言葉は、仲間たちと自分の違いを無意識に理解していたからこそのもの。
自分に備わっていないものがあると、思うに至る、きっかけの言葉の一つがこれであろう。
だからアリスはこう思う。
〝俺は持たざる者だわ〟と。




