1850/2233
クマガイは何もしていない
そしてクマガイはその声を聞いた。
意思を聞いた。
聞くのみならず、対話に至った。
その結果、この世界の秘密を知った。
それ故に、己を知った。
「……」
クマガイは造られた存在。
人間であった記憶はあるが、その記憶自体が造られたもの。
つまり、クマガイに過去などない。
それはショッキングだったし、信じたくないことでもあった。
自分のこれまでが全て崩れる様に思えた。
「……」
だがクマガイは気持ちを持ち直した。
それはひとえに、過去の記憶がよくないものであった為。
クマガイの記憶にあるのは、卑劣卑屈な自分の言動。
そして有栖川たちからの、軽蔑の眼差し。
しかし、全てが、実際にはなかったことなのだ。
クマガイは何もしていないのだ。




