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黒球にとっても
だが、穴倉にとっては、本質的には何も変わらないだろう。
自ら絶命し、心臓を捧げて起爆することに変わりはないのだ。
「……」
自爆の際、無論、穴倉は死ぬ。
当然、意識はない。
故に、仲間を巻き込まぬ様にする、などという加減は一切きかない。
ただ火球の範囲内にあるものを飲み込み、消し炭にするのみだ。
「……」
火球内は穴倉の死体を中心とした、沈黙の世界である。
ただ火炎がうねるのみの空間で、誰も、何も言わない。
「……」
穴倉は業熱の火球の中心部にいて、発火している。
だが、体は原型をきれいに保ったままで、朽ちる様子はない。
しかし、死んでいる。
だから穴倉は、自爆時に何が起きていたかなど、知る由もない。
アリスたちが、脱兎の如く逃げ出したことも。
片やデシネも、似た状況と言える。
「……」
黒球の中にいるデシネは、ジャン・ジャックの悪薬によって絶命した。
それはデシネにとってはもちろん誤算だし、そして黒球にとっても誤算だった。
(……)
穴倉の火球の中で、黒球が呟く。
だがその呟きは、この世界に音として出現しない。




