マシアスの思想
フォンテスは従来の吸血鬼と違う。
育ちも、吸血鬼としての誇りの持ち方も、何もかもが違う。
そういうところが、かえって信用出来ると、マシアスは思った。
吸血鬼は階級社会で、下の者はこき使われるのが当たり前だ。
マシアスは吸血鬼の階級の中では、比較的低いところに位置する生まれだ。
そこに不満があるわけではなかったが、漠然と、貴族階級には羨望の気持ちがマシアスにはあった。
(別に吸血鬼って世界に不満があるわけじゃねぇ……。 けどよ……)
遥か前をひた走るフォンテス。
シャノンを抱えながら走るその背中は、まるでフォンテスが作るこれからの吸血鬼の世界を象徴しているかの様に見えた。
マシアスは思う。
(てっぺんにいるフォンテス様が、下の階級と同じ様に働くんだぜ……!)
真祖の吸血鬼であるフォンテスが、階級的には下のシャノンを、何の抵抗もなく抱き抱え、ひた走るなど、本来あり得ないことなのだ。
シャノンの様に、反発する者が現れることもあるだろう。
しかしマシアスにとっては、フォンテスの、分け隔てない振る舞いは、慕うことが出来るものであった。
(俺は頭悪いからよ、難しいことはよくわかんねぇ。 けどよ、フォンテス様にはついて行けるぜ。 どうだよ? シャノン……!)
フォンテスこそが、吸血鬼の行く末を決定するに相応しい者にマシアスには思えた。
貴族で学があるシャノンには、きっと皆が及びもつかない考えがあるのだろうともマシアスは思うが、それはフォンテスの右腕として振るうべき辣腕だと信じて疑わない。
マシアスのこの考え方は、ある種、吸血鬼の階級に囚われたものであり、真祖こそ絶対という階級主義なのだが、それを本人は自覚してはいない。




